
浮世絵とは、江戸時代の町人の日常生活を描いた絵のことです。「浮世」という語は、昔の仏教用語の一つで、「はかない世」、「苦界」、「無常の世」という意味でした。十七世紀末、「浮世」という語は、喜びと楽しみに満ちたこの世、現世のことを意味するようになりました。日本の版画、浮世絵は、十八世紀末に開花しました。浮世絵の主人公は、遊女、役者、相撲取り、戯曲の登場人物、歴史上の英雄、つまり第三身分の代表者たちでした。そして各々に、次のようなそれぞれのジャンルが生まれました。すなわち、「遊郭」の美女の像、役者の肖像や歌舞伎の舞台の場面、神話や文学が主題の絵、歴史上の英雄の絵、有名な侍たちが戦う合戦の場面、風景画、そして花鳥画などです。
「見立絵」は「たとえ」または「パロディ」と日本語から外国語に訳されることがしばしばです。その芸術的手法をより正確に述べるなら、文学や宗教上の、または歴史上の人物を現代の服装で描いたり、或いはその反対に、今の出来事を昔に移しかえたり、過去の時代設定で描いたりすることです。しばしば、そのような場面は娯楽に興じる美人たちの姿や、子供や動物が戯れる姿で描かれました。この手法の裏には、同時代または近い過去にあった政治的事件を描くのを権力が差し止めるのを避けるという目的がありました。そのまた一方で、絵の発注者や絵師にユーモアの要素を含んだ知的な遊びを作りたい、または版画の内容をぼかして、観る人が隠された内容や、古の詩人が詠んだ古典的な詩を暗号化したものを言い当てる、謎遊びや判じ物を作りたいという止みがたい気持ちもありました。見立絵の版画の題名には、「風流」とか、現代を意味する「今様(いまよう)」という語がしばしば含まれています。見立絵にかけては、鈴木晴信と喜多川歌麿の右に出る者はいません。